現在の整形外科の保存的療法としては、内服、外用、注射、そしてリハビリテーションでは運動療法が主流で、筋トレやストレッチが行われます。
運動器疾患の原因として、老化による変形、老化による筋力低下という説明をよく聞きます。
しかし、誰もが歳をとると同じように発症するわけではなく、私は老化そのものが原因ではないと考えるようになりました。
私は、開業医を続けてきて、整形外科の診療論理の上で、疾患の原因動作の追求、原因動作の誤用対策が少ないことに、ある時気付きました。
ほとんどの運動器疾患、症状を起こした真の原因が、形態でなく、実は動作や姿勢などの生活習慣にあるという事実。それは力学、物理学的要因と言えます。
疾患があって、それが症状を起こしているのでなく、また形態学的異常が疾患を起こしているのでなく、起こした原因は、本人の体の使い方、いわば誤用にあるということ。
症状の原因の一つとなる、形態学的異常の大きな要因である変性そのものにしても、体の使い方が大きく影響しています。
その意味では、整形外科疾患、運動器疾患は、実は体の誤用の習慣による生活習慣病と言えます。
生活習慣になっている、動作、姿勢の誤用こそが真の原因であれば、治療の上でも、その後の予防のためにも、動作、姿勢の誤用をやめて、正しい使い方を知り、それを実行する必要があります。
これがアレクサンダー・テクニークの創始者、FMアレクサンダー氏の発見であり、主張です。
私は、アレクサンダー・テクニークを知り、動作、姿勢の誤用を正していくための手段として、その原理や手法が有用だと判断し、2004年から実際に診療に応用してきました。
パラダイムシフトとしては、治療から予防へ、健康増進。
さらに感情的反応を抑え、理性を重視するアレクサンダー・テクニークの原理で社会と世界が変わる可能性があるとさえ感じます。
今日的には、神経ブロック、トリガーポイント注射から、エコー下ハイドロ(ファシア)リリースへの進歩と同じような治療上のインパクトが私にはありました。
私は運動器医療の専門家である、すべての整形外科医、理学療法士に、アレクサンダー・テクニークを知ってほしいと思っています。それを伝えることが私の使命だと長年考えてきました。その意味で、この本は、私のライフワークです。
整形外科医、理学療法士だけでなく、民間療法従事者の方にも、整形外科医である私が、アレクサンダー・テクニークをわかりやすく紹介したいと思っています。
私は、今回の、この本では、アレクサンダー・テクニークに、整形外科的、医学的観点から、解説を加え、さらに日常臨床の場での使い方、疾患との関係を書いています。
少しでも多くの整形外科医、理学療法士の方が、体の使い方に目を向けていただいて、多くの患者さんのためになればと思います。
恩師のアレクサンダー・テクニーク教師、青木ポール紀和さんから推薦文を頂きました。
青木 ポール 紀和 アオキメソッド
150-0013 東京都渋谷区恵比寿3-5-5 1F
Tel: 03-6409-6412
web: https://aokimethod.com
加藤先生はただ文献を読まれるだけでなく、レッスンを受けて身を持って体感し、それをいかに人に効果的に伝えられるかという視点を持って日々研鑽されています。人に指導できる資格まで得られています。
また、アレクサンダーテクニーク教師以上の幅広い知識と臨床経験を持たれており、一般のアレクサンダーテクニークの書籍では得られない知見が本書には多くあります。もちろん、アレクサンダーテクニークの理論的な部分も丁寧に解説されています。先生は、この本を「私のライフワーク」と言っていました。それくらいエッセンスが凝縮されています。私もアレクサンダーテクニークの医療や教育への応用を願うものの一人です。この本は、整形外科医師、理学療法士の方にはもちろん、柔道整復師、整体師、カイロプラクターといった方にはぜひ読んでもらいたい一冊です。一般の方でも、体への関心が高い方には、その知識欲を満たしてもらえるものとなっています。
整形外科医、理学療法士、治療家のためのアレクサンダー・テクニーク
運動器診療のパラダイム・シフト 生活習慣病としての運動器疾患
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